高周波用基板
高周波基板は、高周波信号の伝送に用いる基板として比較的に高価な基板になります。近年高度情報化社会への移行により高周波基板の需要は著しい変化をもたらしています。高周波回路に使用するプリント基板は、誘電率、誘電正接、誘導体の厚み、回路の精度などを比較検討し、誘電率が低く、伝送損失が低い材料を選定するのが特に重要です。高周波基板にはガラス布基材エポキシ樹脂、セラミックの他に主にPTFEが使われます。弊社では高誘電率の基板材料を多数取り揃えておりまして、40年の実績のもとにお客様のご要望に応じて低誘電率、低誘電正接、高誘電率材料の選定を行い、さまざまな高周波基板仕様にご対応致します。
高周波用多層基板 層構成一例
高周波用基板の異種材料多層基板
弊社の強みとして様々な高周波特殊基板製作があります。お客様とデータの段階からご相談に応じでデータの編集→材料選定→製造方法最善策の選定などを行い、お客様のご要望の基板をカスタマイズして行きます。高周波特殊基板は同じ基板材料で作製する多層基板とは異なり、特性の異なる複数の基板材料で構成された多層基板ですので必要な部分(層)のみに要求特性に適合する基材を使用できます。
異種材料多層基板 組合せ例
•PPE/FR4複合 ナビ用高周波4層基板
•フッ素/メグトロン 光通信用8層基板
•フッ素/FR4 段付4層レーダー基板
•PPE/FR4 段付4層通信用基板
•フッ素/FR4 段付ミリ波アンテナ付き4層基板
特長
•異種材料同士を1枚の基板化することで、さまざまな要求特性に適合する基板が作成できます。
•優れた特性を有しながら多層化の困難だった基材を多層化できます。
•各層毎に材料特性を選択・組み合わせが可能です。
•高価な基材の使用を最小限に抑えることで、コスト低減が図れます。
高周波用基板の異種材料多層基板製品例
高周波用基板製造実績
- 小型船舶用レーダー
- 無線LAN
- ETCアンテナ
- 自動運転システム
- 衝突防止・セキュリティ用ミリ波レーダー
- 高周波部品(フィルタ、分配器、ミキサ、カプラ)
- 高周波半導体
- 携帯電話基地局
- アンテナやアンテナモジュール
- 衛星携帯電話端末
- 計測機器
- 衛星通信・衛星放送
- IOT通信機器
- 光通信
高周波用基板(積層基板など)製品例
弊社の様々な高周波用基板の中で【高周波用メタル放熱基板】【高周波用テフロン基板】【高周波用積層基板】の画像を一部掲載いたします。特に【高周波用テフロン基板】は弊社の得意分野として、多くのお客様から【高周波特性】について好評を頂いております。お客様のニーズに合わせて高周波用基板の特性に関する様々なご提案を致します。
【高誘電率材料】と【基板の小型化】
電子機器の小型化・薄型化・多機能化が著しく進展し、高周波基板への小型化、薄型化のニーズが高まっております。【高誘電率材料】と【基板の小型化】は密接な関係があります。プリント基板回路内の波長は下記の式で示されます。
波長=光速/(周波数×√実効誘電率)≒光速/(周波数×√誘電率)
高周波回路設計では信号の1波長を基本設計値として行うので、基板回路内の波長を小さくする事で基板を小さくする事ができます。したがって誘電率を大きくする事で、波長が小さくなり基板の小型化が可能になります。
高周波用基板の伝送損失
近年プリント基板に対するさらなる高周波化・高密度化・高耐熱化・高信頼性が要求され、誘電特性、耐熱性、形態安定性、難燃性などを向上させる必要性がありますので、高周波帯域で使用される高周波基板は伝送損失が課題になります。PTFE材やPPE材などの低損失基板を搭載することで回路の様々な特性を満たす事が可能になります。
・基板の伝送損失には導体損失、誘電体損失などがあります。
・導体損失は主に金属の電気抵抗により発生し、信号の周波数が高くなると電流が表面に集中するため抵抗損失が大きくなります。
・低損失基板は表面処理も抵抗損失に影響があるので、高い周波数では電気抵抗の小さい金メッキなどを使用しメッキ厚なども調整する必要があります。
・基板材料固有の比誘電率、誘電正接も伝送損失の大きな要因になりますので、低誘電率、低誘電正接の基板材料の選定が必要です。
弊社では低損失基板要求に応じて、基板材料の選定、層構成や製造方法の提案などで高周波基板の低損失を実現しております。
高周波用基板材料の豊富さ日本有数
弊社では誘電率・誘電正接の小さいものから大きいものまでPTFE、PPE,PPO,アルミナなど幅広い高周波基板材料を取り扱っております。
高周波用基板材料について
マイクロ波やミリ波など高周波基板にはPPE材やPTFE材など低損失基板材料が望ましいです。特にPTFE(テフロン材)は低吸水率のため吸湿による特性変化が小さいので、幅広い温度範囲で安定した特性が得られます。
高周波基板用の材料として以下3種類の特徴と用途を述べます。
①PPE(ガラス布基材ポリフェニレンエーテル樹脂)
PPEの特徴はFR-4材よりTg(ガラス転移温度)が高く、低吸湿、低誘電率、低誘電正接のため高周波帯での周波数特性に優れています。専用プリプレグ(接着剤)で積層も可能です。
主な用途:ICTインフラ機器、大型コンピュータ、ICテスタ、高周波計測機器、各種アンテナなど
②熱硬化性樹脂/セラミック・フィラーコンポジット材
FR-4と同じ製造装置を使って加工可能で,同材質 (熱硬化性)のプリプレグ(誘電率3.30,3.52,3.54の3 タイプ)も用意されているので積層板を作ることができます。
主な用途:携帯基地局用アンテナ(3G以降)、基地局用高周波パワー・アンプ、サーバ用バックプレ ーン・ボード、計測機器(3GHz帯以上)、VSAT(超小型地球局)、FWA(固定無線アクセス)、車載衝突防止レーダー(中~短距離)、チップ・パッケージ基板
③ ふっ素樹脂材(PTFE:Poly Tetra Fluoro Ethylene)
合成高分子中もっとも低誘電率性の絶縁材料として、周波数および温度による依存性が少ない。PTFE材は絶縁抵抗が高く、耐アーク性も抜群であり、 化学的安定性、耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れた絶縁材料です。優れた材料ですが耐熱性、耐薬品性が高い反面、加工性が乏しいデメリットがあります。
主な用途:アンテナ、レーダー・システムなどの 航空宇宙、衛星通信、防衛用途の高周波測定装置、フィルタ、カプラ用途、その他、準ミリ波やミリ波帯域
低損失基板ならではのメリットとデメリット
メリットとデメリットについて基板を作る視点で述べます。
メリット
- 幅広い周波数帯域で誘電率と誘電正接が安定する
- 使用環境の温度による誘電率、誘電正接の変化が少ない(転移点を除く)
- 耐熱性にかかわる Tg(ガラス転移温度)の値もFR-4より優れている
- 使われている銅箔にもいくつかのバリエーションがあり、銅表面のプロファイル、表面粗化が小さい銅箔 のVLP箔(Very Low Profile)や銅箔が平滑なシャイニー面を誘電体側に張ったRT箔(Reverse Treated) などがありますので用途に合わせて選択可能
デメリット
- 対応している基板加工業者が少ない
- 基板材料入手に時間が掛かる
- 基板材料が高価
- 低粗度銅箔は基材密着性(アンカー効果)が弱い
- PTFE材を使用した2層基板を製造する場合は専用の製造装置が必要
- PTFE材のスルーホール加工は、銅メッキ時に穴の内壁の粗化が必要
代表的な低損失基板材料
高周波用基板の通信モジュール開発品
この製品は無人航空機と慣性航法情報などの情報をやり取りする無線モージュール開発品です。構想設計~機能仕様作成、回路設計~ソフト設計、プリント基板の製造~実装、製品の特性調整まで一貫して行った自社オリジナルの開発品となります。
高周波用基板対応のPTFE材設計製造時の注意点
- スルーホールの直径は0.2mm以上を推奨
- 基板厚と穴径のアスペクト比は6以下を推奨
- スルーホールメッキ(銅メッキ)は厚さ20μ以上を推奨
- ランドがないスルホールは避けること
- スルーホールのエッジからパターンまでの距離は0.13mm以上を推奨
- 誘電体部分はレジストを塗布しないこと
- スルホールの永久樹脂埋めは基板表面に擦り傷や基板伸縮発生率が高いので不良の一因になる